デズモンド・バグリー
解説
イギリスにはアリステア・マクリーンやハモンド・イネスなどに代表される冒険小説の系譜があります。余り知られて無いかもしれませんが、デズモンド・バグリーもその系譜に属する巨匠の一人と言って良い思います。調べたところによるとケン・フォレットやダンカン・カイル(この人は私は知らないのですがハヤカワから数冊出版されてます)にも影響を与えた作家だそうです。
バグリーは作家デビューが遅かったせいもあって、長編は16冊しか発行していません(下の14作にゴールデン・キールとスノー・タイガーを加えたもの)。これらは全てハヤカワ文庫から発行されましたが、今は廃刊になったものも多そうです。
バグリーの魅力は何でしょうか。どちらかと言えばシンプルな構成なのですが、力強さを感じさせる作品が多いように思います。アクションシーンはさほど派手ではありませんが、主人公のゴツゴツした男らしさ、飾り気の無い人柄などが魅力です。
それと特徴的なのは、その舞台に良く使われる”自然の脅威”です。「高い砦」の雪山シーン、「裏切りの荒野」のアイルランドの荒野、名前そのものの「ハリケーン」。アウトドアが好きで放浪を重ねた自分の体験を活かし、それを物語の背景に(時には主役といっていいほど)上手く使っています。
個人的なお勧めは「高い砦」です。
アンデス山中に墜落した飛行機の乗客達と軍事政府軍の戦い。乗客の一人である歴史学者が考え出したわずかな武器と、地の利を生かし、結束して対抗する乗客たち。そしてクライマックスの決死の雪山越え。
内藤陳さんの名著「読まずに死ねるか」でも高い評価を得ていますが、名作といってもいいとと思います。
略歴
年 | 記 述 |
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1923 | イギリス中央部のKendalという町に生まれる |
1937 | 14歳で学校を終え、印刷屋の小僧として働き始める |
1940 | 航空機会社で働く |
1947 | 南アフリカでの長い放浪生活に入る。石綿・金鉱等で働く。 ジャーナリズムへの関心が深まる |
1950年代 | 南アフリカでフリーのジャーナリストとして活動 |
1960 | Joan Margaret Brownと結婚。イタリアに住む。 |
1963 | 処女作 THE GOLDEN KEEL 発表 好評を持って迎えられる |
1967 | ガンジー島(イギリス領・イギリス海峡のフランス・ノルマンディ近く)に移住 |
1973 | マッキントッシュの男(原題 THE FREEDOM TRAP)映画化。 ジョン・ヒューストン監督 ポール・ニューマン主演 |
1983 | Southampton で死去 |
▽▽読了作品(2002以降の読了本は書評付き)▽▽