セシル・スコット・フォレスター
日本には「チャンバラ」「忍者」「股旅物」などの伝統的アクション小説がありますが、イギリス人にとっては「騎士もの」や「帆船もの」がこれに当たるのだと思います。
セシル・スコット・フォレスターはその帆船ものの中で最も有名なヒーローであるホーンブロアーを生み出した人です。
このシリーズは全10巻。ネルソン提督と同時代に生きた海軍軍人ホーンブロアーの一代記です。第1巻で士官候補生として海軍に入った時からはじまり、最後は海軍提督としての活躍で終わります。もっとも最初に出されたのは5-7巻の部分で、後から前後が付け加えられました。そのせいか一番面白いのは5-7巻です。通して読むも良し、面白いとこから入るのも良し。。。
このシリーズの魅力一つは主人公ホーンブロアーの人柄です。部下に対し孤高の艦長であろうとしながら、実はやさしさを満ち溢れ、しかもそれを乗組員全員が知っている。アクションスターのように格好いいわけではないが(船長の癖に出帆の時はいつも船酔いします)人間的魅力が有ります。また、機略にあふれ、手に汗握る戦闘シーンも読み応えがあります。
私は大学時代にこのシリーズを知り、嵌まり込んでしまいました。以後何度読み返したでしょう。もはや表紙も取れかけ、ボロボロ・真茶色です。出版社はハヤカワ文庫。初刊が1973年ですからすでに30年にもなりますが、未だに廃刊になってないところを見ると、さほど広くはないもののやはり根強いファンがいるのだと思います。日本では”知る人ぞ知る”そんな作品です。
一方ホーンブロアーがイギリスでは如何に有名かを示すものの一つとしてパーキンソン著「ホレーショ・ホーンブロワーの生涯とその時代」があります。架空の人物の伝記、イギリス人らしいユーモアです(たしかホームズの伝記もあったはず)。その以外にも他の作者による帆船ものの小説、例えば「ラミジ艦長物語」などに、あたかも実在の人物のように登場したりします。日本でいえば猿飛佐助のような感じでしょうか。(このあたりの事情についてはこちらに素晴らしいHPがあります)
それと忘れてならないのは訳者・高橋泰邦さんの存在でしょう。高橋さんは日本に英国海洋冒険小説の面白さを紹介しようと、このシリーズを手がけられました。自らが「海の男ホーンブロワー外伝・南溟の砲煙」などを著されるほどのファンでもあります。そして今では、その努力によって、ボライソーシリーズなど数多くの英国海洋冒険小説が日本で翻訳・紹介されています。
略歴
年 | 記 述 |
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1899 | エジプトのカイロに生まれる。父親はエジプト文部省のイギリス人係官。 本名 Cecil Lewis Troughton Smith |
1901 | 母親とともにイギリスに帰国 |
1915 | Dulwich Collegeに入学 |
1921 | 著作活動に入るために学業を断念 |
1925 | 「NAPOLEON AND HIS COURT」など初期の伝記作品を発表 |
1932 | 「DEATH TO THE FRENCH」などで小説家としての地歩を築く。 ハリウッドとシナリオライター契約(1937まで、1年のうち13週をアメリカで過ごす) |
1935 | ヒット作「アフリカの女王」を発表。 |
1937 | 「THE HAPPY RETURN」でホーンブロアーシリーズを開始 |
1943 | 動脈硬化のために一時文筆活動を停止 |
1945 | カリフォルニアに移住。 |
1951 | 「Captain Horation Hornblower」がグレゴリー・ペッグ主演で映画化。 「アフリカの女王」が映画化 監督:J・ヒューストン 出演:H・ボガート,C・ヘプバーン |
1967 | カリフォルニアにて死去。 |
▽▽読了作品(2002以降の読了本は書評付き)▽▽