白石 一郎
解説
白石さんは多くの歴史・時代小説を発表しながら、(滝口康彦氏、古川薫氏と共に西国三人衆として)中央文壇に背を向け、ずっと福岡で筆をとられている作家さんです。最近は十時半睡シリーズがテレビ化されて少し知名度が上がったかもしれませんが、まだまだマイナーな作家さんだと言えるでしょう。
作品は地元・九州を舞台にした歴史小説が多く、また九州には博多や長崎など鎖国以前の大貿易港があることから海を舞台にした作品が多いのも特徴です。ただ、歴史小説にとどまらず、前述の「十時半睡シリーズ」や「投げ銛千吉廻船帖」などの時代小説、さらには「鳴門血風記」のような伝奇小説、そして時代SFとしか言いようの無い「黒い炎の戦士シリーズ」など、実に多岐に渡ります。
私が白石一郎さんを読むきっかけになったのは短編「秘剣」です。客観的に見れば白石作品の中で特に優れた物だとは思わないのですが、何故か心を揺さぶられる物があるのです。その後、代表作「海狼伝」(白石さんらしい、九州を舞台にした海賊の話です)でしっかりはまりこみ、十時半睡シリーズで止めを刺されました。
白石さんの小説は歴史・時代小説として非常に正統的です。司馬さんの「俯瞰」、周平の「優しさ」といった強い特徴は無いのですが、九州と海を背景にした真っ当で清々しい作風が白石さんの魅力です。でも最近はどうも主人公の魅力が失せて来たことが気になります。
歴史物がお好きな方は「海狼伝」から、時代小説がお好きな方は「十時半睡シリーズ」からお入りになるのをお勧めします。
略歴
年 | 記 述 |
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1931 | 韓国・釜山生まれ。終戦と共に九州・佐世保に帰国。 |
1954 | 早稲田大学政経学部卒業。しばらくサラリーマン生活を送る。 |
1957 | 『雑兵』で作家デビュー |
1987 | 『海狼伝』で直木賞受賞 |
1999 | 『怒涛のごとく』にて第33回吉川英治文学賞を受賞。 |
▽▽読了作品(2002以降の読了本は書評付き)▽▽