2001年から書き始めたトドの書評データベースです。
2019年7月に2000冊を越え、今も年100冊程度追加しています。
(書評が無いのは2000年以前の読了本です)


辻内智貴

作成日不明

解説

辻内さんは2005年のインタビューで以下のように言っています。

35、6歳で音楽に挫折して、何もすることがなくなって、ヒマになっちゃったんですよね(笑)。それで本もまたよく読むようになったし。それで、37、8歳くらいに、急に集中的に書き始めたんですよ。どこに持っていくあてもないのに、その時に、2年間で中編を十数本、短編を二十編くらい書きました。
で、そのあとはぱったり書かなくなって。今はその時の財産で食っているようなものなんです(笑)。あの頃の情熱が今もあればいいんですけれど、全然書いていなくって(笑)…。

この時の様子が2012年に出版された『僕はただ青空の下で人生の話をしたいだけ』の中の「阿佐ヶ谷」と言う短編(と言うより詩の様です)にかかれています。

 三十代から四十代前半にかけての十年間を
 私はこのアパートで過ごした。
 西日だけが差し込んでくる二階の四畳の角部屋で、
 そのころ私は、何かに憑かれたように、物語を書いていた。
 (以下略)

寡作な作家さんです。いや、本当に作家さんと呼んでよいのか。。。

作品はともかく美しい。
”優しく純粋な良い話”であり、もっと言えば”綺麗事”です。
でも、それが突き抜けて嫌味さえも感じさせない。それが魅力の作家さんです。

2001年から2006年にかけて、一連の作品を発表してから沈黙。2012年に前出の『僕はただ青空の下で人生の話をしたいだけ』が出版されました。これまでに無い私小説的な作品であり、やや退廃的で破滅的な色合が強まった気もします。さて、今後はどういう風に変化して行くのでしょう。

いや、それ以前に、次の作品が発表されるのかどうか。。。

略歴

記   述
1956 福岡県飯塚市で生まれる。
1977 東京デザイナー学院商業グラフィック科卒業
1978 ビクターレコードからソロシンガーとしてデビュー。以降3年間ビクターレコードに在籍。
その後もライブハウスなどで音楽活動を続ける
1999 「セイジ」が太宰治賞最終候補作に残る。
2000 「多輝子ちゃん」で太宰治賞を受賞

受賞歴

一貫して上記のような特異な作風で書き続けている作家さんです。
その中で『失われた町』や『鼓笛隊の襲来』で直木賞候補になるなど、何度か文学賞候補には上がるのですが、受賞することは難しいと思います。
ですから受賞歴は新人賞だけですが、今後もブレずに書き続けて頂きたいと思います。

作品
多輝子ちゃん
~単行本『青空のルーレット』に所収
太宰治賞 2000

▽▽読了作品(2002以降の読了本は書評付き)▽▽