日曜大工が趣味だった父親の道具を引き継いで。。。
何かを作る為の工夫を考えたり、実際に手を動かしていると
機嫌が良いのです。退職後、ますます加速中。

弁才船河市丸の復元模型1

2018/08-2019/08

構想

最初に考えるのは縮尺です。
大きな模型は飾る場所が困るし、小さいと細工が細かくなり過ぎて難しい(以前別の模型で挫折したことあり)。実際の船の全長は20mほどなので1/30の60㎝くらいが丁度良さそうです。ついでに1尺(30.3㎝)=1㎝にすれば色々な換算をするのに便利です。

広島県立図書館所蔵の「瀬戸内の漁船・廻船と船大工調査報告」の中から、下の船をベース図面に選択しました。
この本は昔の船大工さんが描いた板図(大きな板に墨で描いた図面)のトレースを大量に掲載しています。
その中から時代、船の大きさ、図面の完成度からこの船を選択しました。

【ベース図面】 番線や左端の人形は私が書き加えたもの

[Data]
香川県仲多度郡琴平町札前
紙図 137.5X49.7
側面図 1/20
角屋七郎次郎の御朱印船に船型が似ている
18世紀初頭のものか
琴平海洋会館 所蔵


図面化

船大工が描く板図はほとんど側面図と中央部の断面、船尾部を後ろから見たビューしかありません。
私はこれだけの情報で模型を作りあげる自信は有りませんので、まずは図面づくりです。

【原寸図面】 クリックすると拡大します
そういえば我が家を建てた超ベテラン大工さんが持ってた図面は柱の位置を示す平面図だけでした。でもその図面から切り出し、ホゾ穴などを明けた材木が、柱立ての日に何の問題も無く組みあがって行ったのには驚きました。彼らからすると3次元のきちっとした図面が無いと仕事できない人間なんて、ヒヨッ子なんでしょうね。

「図面」は普通に思い浮かべる「機械製図」では無く「線図」と呼ばれるものです。
元々は自動車の設計屋。しかも機能よりデザイン要素が強い内装部品を専門にしていたので、こうした曲面を表現する線図には慣れています。とは言え
 ・慣れている≠上手い。下手だったので3次元CADを勉強した。でも今回は手書き。
 ・何と言っても30年ぶりの作業
やり始めると久しぶりの図面描きはなかなか楽しく。
綺麗なカーブを描くのに会社では「しない定規」という柔らかく撓むプラスチックの棒を使っていたのですが、今回は4㎜角の工作用木材で代用するとか、色々と工夫を重ねながらの図面化です。


参考にした本の一部です

図面化を始めると、板の重ね方など細かいけれど重要なところが疑問点として沢山上がってきます。参考書も多くは用語の説明に終始していて構造までは良く判りません。困った挙句、山口県光市の「光ふるさと郷土館」に弁才船の模型を見に行ったりしました。

役に立ったのが逓信省管船局が明35.4に出版した「大和形船製造寸法書」です。船大工が持っていた「木割書」を技官が問い聞きしながらまとめた本のようで、構造や結合方法(ちょっと絵が判り難いのが欠点)だけでなく、様々な梁、板、柱などの素材寸法が100石毎に計算されています。なんとこれを国立国会図書館がデジタル公開してくれています。こんな資料が自宅からネットで見られるなんて便利な世の中です。

大和形船製造寸法書の一部をエクセルに書き出したもの

側面図、平面図、主要断面などで構成される全体図が出来たら、今度はそれから切り出した部品の単品図や治具図を作って行きます。


次は 船体~船底と船側/釘打ち/補強梁