日曜大工が趣味だった父親の道具を引き継いで。。。
何かを作る為の工夫を考えたり、実際に手を動かしていると
機嫌が良いのです。退職後、ますます加速中。

外壁補修~一人古民家再生

2017/4~2017/8
隣が壊され、露わになった我が家の壁。
漆喰だけでなく下の土壁まで部分的に剥がれて、
木目のトタンも色褪せ、落書きまで。。。

我が家は築100年強の日本家屋です。カッコ良く言うと古民家(笑)。
軒(のき)を接するように建てられたお隣も似たようなお家だったのですが、建て替えされることになりました。
お隣の壁が我が家の敷地ギリギリにあり、当然軒は我が家の敷地の上にあります。別にそれは構わないのですが、建て替えとなると当然境界から1mは控えることになり、我が家の壁が丸見えになります。これが問題です。お隣の陰で見えないのを良いことに放置して来た我が家の壁は、漆喰はおろか下の土壁もボロボロなのです。気にはしていたものの、修理しようにも狭すぎて足場も組めないので放置して来た我が家の臓物が白日の下に晒されてしまいました。
ただ、ある意味ベストなタイミング。4月で退職し、今なら時間もたっぷりあります。

実は2002年に同じ理由で逆側の壁を工事してきます(こちら)。やる事は基本的に同じです。
ただ、前回は近所の電気工事会社をやっている人が好意で足場を組んでくれたのですが、今度は足場も自前です。父親が温室の骨組みに使っていた足場用単管パイプが残っているのですが、とてもじゃないけど全部をカバーするほどの数は有りません。
そこで3段階に分けて行うことにしました。

1stステップ;中央上部。3mを超える足場。
2ndステップ;右下部。2m弱。
3rdステップ;左下部

各ステップでやる事は下の8段階です。どれもおよそ1日(実作業時間4時間くらい)かかりました。
1.足場組み→2.木部清掃→3.木部塗装(1回目)→4.木部塗装(2回目)→5.漆喰剥し/土壁補修→6.土壁補強→7.白壁塗→8.足場分解

足場組み

一人で足場を組むのは大変です。右側に登って仮止めして、左側を固定しようと思うと水平が出なくて、また右側に登って直して。。。一つしかない梯子を抱えて行ったり来たり、登って降りて。少ないパイプで何とかしようと思うので大変でした。

木部清掃

木部の清掃は真鍮製のワイヤーブラシでやりました。梁の上には100年間の、目の細かい埃がみっちり積もっています。軒下はベンガラ塗だったようですが、ニカワ分が飛んで鉄粉だけが乗ってる状態。いずれにせよ凄いホコリが舞い散るので豚鼻みたいな防塵マスクに水中眼鏡みたいな安全眼鏡での作業です。

木部塗装

塗装は木材用防腐塗料です。水性を選んだので耐久性能には若干不安があるのですが、なんといっても道具類の始末が楽です。

土壁補修

土壁の剥がれた部分はお隣を壊した時にこっそり調達しておいた土壁を再利用。水を加えて練れば再利用できるのが土壁の良さです。もっとも最後には足りなくなって、ホームセンターで売っていた瓦の下地用の赤土を使用しました。接着力が強くてなかなかです。

土壁補強

土壁補強と塗装移りの防止

凹みはこうやって直しましたが、そもそも壁全体の固着力が弱っています。そこでいつものように全体の補強。木工用ボンドを10倍に水で薄めた液を万遍無く吹き付けていきます。100円ショップの加圧式霧吹き(ペットボトルにつけるタイプ)が大活躍。ボンドが上手く溶け切って無くても何のお構いもなく吹き付けできます。霧の細かさを追求する高級品ではこうは行きません。
普通なら木部にかからないようにマスキングをするのですが、木部の塗装移りを防止する目的で、壁からの立上り面はマスキングせず、むしろボンドを掛けるようにしました。正解だったようです。2002年の時に発生した白壁への塗装移りは出ませんでした。

白壁塗

白壁は前回と同じ「CLモルタル総合材マーブル」です。白色セメントを主材に様々な材料が混ぜられ、水で練って鏝で塗るとちょっと見には漆喰に見えます。ただ腕がついて行きません。どう頑張っても鏝跡だらけです。まあ、道行く人からは少し距離も有り、視線も上なので余り気付かれませんので良しにします。


写真を見た娘の一言「ほぼ大工」
確かに。。。

明り取り窓

次に取り掛ったのが、最初の写真で右端に写っている引き戸。お隣を壊したら見えるようになって、近所の人達の間で「あんな所に入口があったんだ。」と話題になって居ました。内側は納戸に改装済み(こちら)なのですが、もはやここから出入りすることはありません。
扉を外し、上のガラス2枚部分を窓に再利用するために切り離して、間口に合うように幅を縮めます。この扉は父親の手作りかもしれません。今は使わないラワン材で出来ていて加工は簡単です。ただ、昔ながらの板ガラス切りに失敗。結局、あちこち探しまわって透明塩ビの板に差し替えました。
中にあった小さな靴脱ぎスペースは土台を組んで床板を貼り付け、壁部分は室内側を木目プリントベニヤ、外側を構造用合板で塞いで完成です

板材購入

さて、ここからは板貼りです。最初は縦に貼るつもりだったのです。ところがちょうど田舎を車で走る機会があって、その時見かけた鎧貼り(横貼り)が良いという家内の意見で方針変更。
まずは材料調達。これが大変でした。ホームセンター(HC)を見て回るのですが、なかなか良い材料が見つかりません。最後は車で30分くらいの所にある、他のHCでいう資材館しかなく「一般の方、歓迎」と書かれたほぼプロ用のお店で買いました。それにしてもこれだけの量を、一度にしかも乗用車に積んで帰るのは、なんか少々恥ずかしくて。。。

壁裾の断面図

壁裾の処理

まずは壁裾の処理。
古民家ですから、基礎石の上に基礎木材が乗っているだけの構造です。問題は木材が地面すれすれの高さなので、土がかぶってしまい湿気で腐ることです(実際一部痛んでいました)。セメントで固めることも考えたのですが、防水紙(アスファルトフェルト)が業者用の20mサイズしかなく、異常に高くつきます。ホームセンターめぐりした挙句に思いついたのが、屋根材のコロニアル(化粧スレート)利用する方法です。
まずは固定用の桟を水平方向に柱に打ち付けます。地面を掘ってコロニアルを差し込み、基礎石との間に余った壁材のマーブルを突っ込んで、上端を桟に固定します。これで基礎材が地面に触れることなく、周りに通気性の期待できる空間ができました。また、処理に困る余ったマーブルを有効活用できたのもメリットです。
桟の上に楔形のスペーサーをかまして、壁から伝い落ちる雨水を切る小屋根をつけて完成です。

鎧貼り

うるさくて近所迷惑なカンナ掛け
大量の鉋屑が出ます

ここから先は、ひたすら下から板を貼り上げて作業なのですが、その前に板材の処理です。
買ってきたのは幅165㎜、厚み12㎜、長さ2mの杉の野地板です。野地板は本来は屋根の下地など見えない部位に使う板で、表面の処理は荒くけば立っていますし、節穴も沢山あります。もっとも今回のような使い方の場合、節穴も「味」だと思っているのですが。
塗装作業は家内が名乗り出てくれました。どうも大好きなようです。全部で60枚ほど有り、一度に乾燥する場所がありません。5回ほどに分けて作業するしかなく、下のようなローテーション作業になりました。
・朝一に私が前日に二度塗りが終わった板を壁に打ち付ける。家内は前日一度目の塗装が終わった板の二度目の塗装。
・家内が義母の家に御機嫌伺い(1時間ほど)に行くので、その間私は新しい板のカンナ掛け。
・義母の家から帰ってきた家内がカンナ掛けが終わった板に一度目の塗装。私は板貼りの続き。
なかなか効率良く。

皆さん、貼り付け作業に感心されるのですが、大したことはありません。
10㎜ラップの150㎜ピッチで打ち付けますが、あらかじめ150㎜の目盛り線を引いた細長い板を柱に仮止めし、それに合わせてトンカチで打ち付けて行く淡々とした作業です。まあ、窓などに合わせた切断作業と切り口に塗装する作業は有りますが。

ラップ量は釘頭が隠すために10㎜にしたのですが、これはちょっと失敗でした。完成後しばらくすると妙に釘頭が表に見えてきてしまうのです。理由を調べたらネット上にありました。野地板は乾燥が不完全で乾燥すると幅方向に3%くらい収縮するのだそうです。165㎜の3%ですから5㎜くらいは縮んでしまい、隠れていた釘の頭が見えて来たのです。所によってはラップ量が1㎜位しか残ってないところもあります。外壁なので錆を考えてピカピカのステンレス釘(ねじりがあって抜けにくいタイプ)を使ったので、余計光って目立ちます。まあ、マジックペンみたいな容器の補修用ペンキで簡単に補修塗装できましたが。

上にあるのは自作テンプレート。
ちょっとした事ですが便利です。

ささらご加工

苦戦したのが押さえの縦桟です。
もともと鎧張りに躊躇したのが、この押さえ桟の鋸歯状の加工(ささらご加工といいます)をどうやるのか判らなかったからです。手元にある電動工具の中で最も上手くいきそうなジグソーでトライしたのですが、歯が弱くて真っ直ぐに入らず。出来たものをノミで直すとやたらと時間がかかり、しかも綺麗にできません。レシプロソーの購入も考えましたが、高価でしかも出来ると確信が持てず躊躇していしまいます。ままよと電動丸鋸でやってみたら、予想以上に上手く出来ました。

切断工具の色々

まずは斜めに切り込んで行きます。もっとも丸鋸なので表面は切れても裏面は残っています。残った部分はジグソーで切り(丸鋸が入っているので歯が曲がりません)、さらに板の厚み分を直角に切り込めば完成です。
考えるより産むが易し。私の腕でも思ったより丸鋸が直角に入ってくれました。
ほぼ一日で必要な4本のささらご加工が完成しました。


横板のつなぎの上に縦桟を打付け
両端の縁材の加工

ところで、上に書いたのは中央3か所の縦桟です。両端と窓枠部は、半分はささらご半分は平面という加工が必要です。
・縁材を丸鋸で上面と側面から半分ぐらい切り込んでL字断面にする。
・上のささらご加工で出来た三角の端材を10㎜ほどの厚さに切断し、L字断面に貼り付けていく(木工用ボンド+釘)
・接着剤が固まったら、カンナをかけて段差を消す
これでな~んちゃってささらご加工の出来上がりです。(本職はどうやって作るのかな?)

これらの桟もちゃんと2度塗装して固定。上側にも桟と小屋根をつけて壁の全体が完成です。
作業の間にすっかり仲良くなった隣の新築中の気の良い若い大工さん「できましたね。」と言った後で、このささらご加工に気づいて「これも自分でやっちゃったん?」と半ばあきれ気味に言われました。
実は15年ほど前に玄関周りを改装した時に、仲良しのベテラン大工さんに本格的なささらご塀を作ってもらったのですが「めんどくさいこと言うの~」と言われましたし、ネットで見ても「大工泣かせ」と書かれている加工なのです。
素人細工ですから精度はかなり粗いですが、十分です。
なかなかでしょ。


建具1;上部障子窓

両端の縁材の加工

さて残すは建具の作業です。
白壁の中に2か所窓があるのですが、これが気になってました。柱と窓枠が同色で区別がつかず、柱の太さが途中で変わってるように見えて変な事と、中(屋根裏の倉庫)の物が丸見えです。
実はこの窓、10数年前は田の字型のガラス窓でした。しかし割れたガラスを差替えようとしたら、窓縁までひどく痛んでいるので私が作り直したものです。
一旦バラバラにして木部はカンナ掛けして塗装を取ります。次に鍋用のカセットコンロを持ち出し、木部が黒くなるまで全体を焼きます。真鍮のワイヤーブラシで炭化した表面を取ると、燃えにくい硬い木目部分が浮き出した「浮造り」になります。これに無色透明の木質保護塗料を塗って、枠は完成です。
ガラス面(実はアクリル板)の室内側に縦3本横2本の桟を取り付け(ちゃんと組子を加工し、ほぞに入れてますが、見えない場所なのでかなりいい加減)、その裏からプラスチックの障子紙を貼り付けて完成です。
障子紙は両面プラスチックコートされたもの。元は飼い猫対策で破れ難くしたものだそうですが、汚れても雑巾がけできるのでこんな場所には最適です。

建具2;面格子

両端の縁材の加工

もう一つは、今回作った明り取り窓の面格子。
こちらはお隣の陰になるので、見栄えというより防犯対策。近所のホームセンターで安売りしていた松材の束売りを買ってきて、横二本を取ったら、残った材でできる限り多く取った縦棒を裏から木ねじで固定。塗装は家内の意見を入れて明るめの木材保護塗料を塗りました。
壁への固定は四隅を木ねじで締めます。ねじ頭が丸見えだとドライバーで簡単に外せるので、上から同色で塗装した薄板(ソーメンの箱からとったもの)を隠し釘で打ち付けて、ちょっと見では判らないように細工しました。

最後にクーラーの配管。カバーは痛んでなかったのでスプレーペンキで茶色に塗装して、元のように付け直してすべて完成です。



【データ】
期間;2017/04/15~07/20(約3カ月)
  雨や用事で作業しなかった日もあり実際には70日程度で、一日平均4時間作業していたので実働で280時間くらい。
費用;71,000円
  材料費;約5,6000円
  工具費や再使用可能な材料(足場板→花壇の敷板);約1,5000円  


最後に完成前と完成後の比較写真を。
通りかかった近所の人が一言「一人で良くやっちゃったね。これを業者に頼んだら80万円は要求されるよ。」
まあ金額は判りませんが、塗装担当の家内と二人、仕上がりには十分満足しています。

改修前の状態
完成後の状態